2018年09月26日

【猫目堂】隣のずこずこ【本日のオススメ本】

行ける人には、すぐ行ける
行けない人は、ずっと行けない
そんな街、宵待町。

どうしました、キョロキョロして。
「猫目堂」をお探しですか?
それなら、けんびきょう座2-1番地…
ああ、この町は初めてですか?

なら、駅を出たら宵待ち通りをまっすぐ行って
二番目の路地をちょっと右に見て下さい。
そうそう、曲がってすぐの煉瓦の建物です。
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こじんまりした入口なんで見逃しそうですが
本屋「猫目堂」はそこにあります。


営業日も営業時間も店長の気まぐれ
なんで気を付けて下さいね。
入口に看板が下がっていたら
その日は店が開いています。

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お店には本好きだけど、仕事はまだまだ見習い中
でも趣味のお料理の腕は、なかなかの店員さんと

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本を読み始めると
窓の外が暗くなっても気づかないし
ごはんを食べるのも忘れちゃう店長がいます。

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そうだ、良いことを教えておきましょう。
合言葉です。

「本日のオススメは?」

そうすると、あなたは店の奥のカフェに
案内されるでしょう。
少し待てば店長がオススメの本を
いそいそと持ってきますし
店員さんが読みながら食べるのに
うってつけのおやつを用意してくれますよ。

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いえいえ、私は用事があるのでここで失礼。
ここへはよく来るので
またお会いすることもあるでしょう。
「猫目堂」へようこそ。

よい読書を。


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隣のずこずこ
隣のずこずこ 」 柿村将彦・著 / 新潮社
 ISBN:9784103516613

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 選考委員である恩田陸、森見登美彦、
 萩尾望都先生らが絶賛していたので
 読んでみたのですが
 読み終わった後
 「なるほど、これは面白い」と思いました。


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 そんなにですか?

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 2017年4年ぶりに再開された
 日本ファンタジーノベル大賞の受賞作なのですが
 そうか「現代の」ファンタジーとは
 こういうものなのかもしれない、と
 思いました。


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 へぇぇ~ぼくも読んでみようかな…
 どんなお話なんですか?


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 人口300人程度の小さな集落「矢喜原」には
 「権三郎狸の話」という昔話が
 語り継がれています。
 巨大な権三郎狸が現れると、村は火で焼かれ
 村人は一人残らず呑み込まれる、
 というものです。

 ある日、その権三郎狸が「狸憑き」の女性
 あかりさんと共に村に現れます。


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 ひえええ

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 村が権三郎狸に呑み込まれるまであと三週間。
 住んでいなくとも、狸が村に来た時点で
 村にいた人間はどこに逃げても
 権三郎狸に呑み込まれます。


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 それはひどい…

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 ひどいですね。別の町に住んでいて
 たまたま村を訪れていても呑まれます。
 しかし、主人公のはじめを含む
 村人たちは急に告げられた最後に対して
 諦め、悟り、受け入れます。
 「そんなバカな」と思いつつ
 「三週間後に起こる悲劇」を
 前提に過ごし始めます。
 知らぬ間に権三郎狸のシステムに
 組み込まれて育ってしまったのです。

 村人たちは各々、
 いつも通りに農作業をする人もいれば
 毎日バーベキューをし始めたり
 もう終わりなんだから、と
 自棄になって犯罪に走る人も現れます。


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 村の人たちは村の外へ逃げ出さないんですか?

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 勿論、海外へ逃亡しようとする人もいます。
 でもどこかで「逃げられない」と理解して
 諦めてしまっているのです。

 飄々としていてユーモラス。
 その中に混じる狂気。
 1m半の信楽焼の狸の置物そっくりの化け物が
 ずこずこと歩くさまを想像してご覧なさい。
 奇妙に可笑しいです。

 それでいて絶対的な抗えない物事を
 目の当たりにした人間の反応
 絶対に終わる将来が描かれているので
 どこか哀しく、そして怖いのです。


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 それにしても変わったタイトルですねぇ

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 表紙イラストといい「となりのトトロ」を
 連想させようとしているのかなぁと
 僕は思うのですが…
 「あの世界観を期待すると痛い目にあうぞ」
 という皮肉なユーモアを感じます。

 ただ、投稿時は「権三郎狸の話」という題名
 だったようなのでなるほど、
 確かにこの題名の方が目を引くなぁと
 思いますね


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 僕も読んでみます!

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 そうですね、君は森見登美彦さんの本が
 好きなので、好みに合うかもしれません。
 少しテイストが似ています。
 一冊にこんなに色んなジャンルの要素を
 詰め込んだ作品を書く新人さんが現れて
 今後の作品が楽しみで、ワクワクしますね。





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【栗饅頭と玉露】
作中に出てくる高崎ストアの栗饅頭
ほどにおいしいかはわかりませんが…
読んでいたら無性に食べたくなって
宵待ち通りの白鳳庵さんに行って買ってきました。
中には栗が丸ごと一個入っています。



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というわけで、こんな感じで
オススメ本を紹介していこうと思っています。
ただお勧めするのではなく
どうやったら興味を持ってもらえるかなぁ…と
考えた形でこうなったのと

私自身が店員さんが面白い本を
オススメしてくれて
話に合うおやつまで用意してくれる
本屋カフェがあったらなぁ…と
いつも思っているので…

猫目堂、店長店員共々
お付き合い頂けたら嬉しく思います。



【web拍手コメントへのお返事】

(全てにお返事できなくて恐縮です…
 全部読んでいますし
 本当に励みになっています。
 ありがとうございます!)



>ホラーとミステリーの
ドキドキは違うの…?
ち、ちち…違いますよ!
ホラーは本当に身近にあったら嫌だな…と…
…あれ…?ミステリーの殺人事件も
身近にあったら嫌ですね…
あれ…?


>スーパーでも置きっぱありますよね
ありますあります…
買い物していてお菓子の所に
お弁当を戻さず置いていく人の
気持ちがわからないです…


>本好きなの!?
本は好きでも買ってないのは
自分のものではないから
大事ではないということなんですかね…
個人的に自己啓発系のライトエッセイ
「彼が振り返る女性になる!」的な売り場が
割とあれていることが多くて複雑な気持ちになります…

>ホラーは全く読まないのですか?
基本は避けて通りますね…
ただ、面白いと話題になってたり
小野不由美さんが好きなので
それはつい読んでしまいます…
(そして後悔します…)



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